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残念検証冬馬さん

 
「残念肉食ウサ子さんがもうすぐ連載開始一年を迎えるに当たり、これまでの連載内容がいかに残念だったかを検証しようと思う」
 
 肉食の会、部室。「検証会議」と縦書きで大書された黒板の前で、冬馬さんが会議を仕切っています。他の3人は、向かい合って起立。
 
「あのー、座っちゃいけないんでしょうか冬馬さん」
「駄目だ。座って会議をするとダラダラ会議の原因になる。ダラダラ会議は長時間残業の原因の一つだ。昨今の社会情勢を鑑みれば、そのようなことは許されない」
「椅子なしで立たせて仕事させるのもブラック企業だーって叩かれてたじゃないですかあー」
「大丈夫だ、すぐに終わるから」
「わかりました、天井のシミでも数えてます」
「馬鹿者。そういう無意味なことをしてるから会議が長引くんじゃないか。15分で終わらせるぞ。とっとと意見を出せ」
「は、はい、では…」
 
 ウサ子さんの横から、麒麟ちゃんがそっと手を挙げます。
 
「うん、なにかな?」
「私が言うのも何なんですけど、そもそもみなさん、残念っぷりが足りないと思います。ウサ子さんお調子者だけど残念って程じゃないし、冬馬さんは模範的常識人だし別に鉄であることは残念じゃないと言うか残念呼ばわりはむしろ鉄に失礼だし、鹿乃子様は私に人生の生きる道筋たる道程を与えてくださるお方ですし、みんなぜんぜん残念じゃないです!」
「まあ、確かにな。ウサ子なんか主人公のくせして、残念ぶりがリトバスの三枝葉留佳にも及んでないからな」
「ななな、なんと!」
「ついでに言うと葉乃はるかにすら負けていると思いますよ」
「ななな、なんと! では、私どうしたらいいのデスカ。新潟港で日本海に向かってゲロなっしー! とか叫べばいいのデスカ?」
「いや、そこまでしなくていい。というかせんでくれ」
「ワカリマシタ。では代わりに京都市伏見区でダンスでも踊ってくることにしマス」
「三枝葉留佳の真似も無理にしなくていいからな」
「Let's dance! Nice boat!」
「おまえそのネタどれだけの人間がわかると思ってるんだ…」
「わからない人が多いほど残念さが増していいのです!」
「いや、なにが残念なのかすら理解できないから、ただのうるさい人だ」
「ただじゃないですよー、肉食ですよー。お肉はただでは食べられません!」
「それを言ったら野菜もただではないが…」
「それがあなた、おうちで野菜や舞茸育ててると、ただで手に入るんですよ!」
「ああ、うん。山が近いとある日突然庭に高級食材が生えてくることもたまにあるしな」
「でもお肉はただでは手に入りません! うさぎ追いしとか、そんなの昭和の話です!」
「わかったわかった、肉食肉食。ただならぬ肉食なのな」
「えっ。でも、そもそもウサ子さんって本当に肉食なんですか? お菓子食べてることの方が多い気がしますけど」
「いや、この場合の肉食というのは、草食男子に対する対義語としての肉食女子であってですね。男を押し倒して犯すとか、そういう系の」
「つまり三枝葉留佳の次は二木佳奈多ということですか?」
「ウサ子は押し倒すどころか走って逃げたけどな」
「だって! 三次元の男ってなんか怖いし!」
「なんだその草食丸出しな発言」
「いや、そうじゃなくて! 慣れてないから怖いの! 包丁だってパソコンだって、慣れてないうちは怖いでしょ!?」
「まあ、確かに練習しないと怖いというのはあるかもしれないな」
「でしょ!? まずヴァーチャルな何かで練習した方がいいと思うの!」
「ヴァーチャルですか…。では少々お待ちくださいませ」
 
 そういうと鹿乃子さんは、携帯を片手に部室を出ていってしまいました。
 そして冬馬さん達がお茶を飲んでると、15分ほど経って戻ってきました。
 
「お待たせしました。先ほど、Googleの買収が完了しました。15分ほどでヴァーチャルでAIな男性を作ってくれるそうです」
「早いな。さすがGoogleだ」
「いや、そのGoogleを15分で買収するところにまず驚くべきじゃない!?」
 
 そして冬馬さん達がお茶を飲んでると、15分ほど経ってヴァーチャルでAIな男性が届きました。
 
「ノートパソコンだな」
「ただのノートパソコンですね」
「そりゃまあ、ヴァーチャルなんだから外見はしょうがないんじゃない?」
「いや、外見を気にしない男は駄目だろう」
「本人の努力でどうにもならないものはしょうがないと思います」
「まあ、それもそうか。確かに中身も大事だ」
 
 そう言って冬馬さんはノートパソコンのディスプレイをあけました。
 Windows Updateが走って再起動中なので操作できませんでした。
 
「こいつかなりナメてるぞ」
「えっ、でも自分のことは自分でできるしっかりした人何じゃないんでしょうか?」
「自分のことしか考えてないともいえるぞ」
「まあ、こういう場合は文句を言っても仕方がないですし、お茶でも飲んで落ち着くのを待ちましょう」
「さっきからお茶飲んでばかりなんだが」
「まあ、それは失礼しました。ではお茶ではなく肉汁にしましょうか。私達、肉食系ですし」
「いや、お茶でいい。お茶にしてくれ」
 
 そして冬馬さん達がお茶を飲んでると、15分ほどでWindows Updateが完了しました。
 
「よし、起動するぞ。お、早いな」
「SSD搭載モデルですので」
 
 ヴァーチャルでAIな男性が起動しました。
 
『ありがとう、やっと君から話しかけてくれたね。ずっと待ってたんだよ』
「なんかこいつ微妙に重いな」
「そうですか? SSD搭載モデルなんですけど」
「いや、そういう話じゃなく」
『僕のために争うのはやめて!』
「自意識過剰だなこいつ」
『ごめんなさい…首吊ってきます』
「しかもメンタル弱いな」
『ところで誰か久弥の行方を知らんか?』
「挙げ句にコミュ障かよ」
『准、いけません! 鹿の子とは遊ぶなとあれほど言ったでしょう!』
 
 鹿乃子さんからにわかにおどろしいオーラが出始めました。それを察した麒麟ちゃんがあわててノートパソコンのディスプレイを閉じます。
 
「あの、SSDって早いけど壊れやすくて、だからあんまり酷使しない方がいいので、もう終わりにしましょう!」
「まるで最近の若い男性のようだな…」
「ごめんなさい! 修理します!」
 
 そう言って麒麟ちゃんはノートパソコンを持って部室を出ていってしまいました。見送った冬馬さんがはぁとため息をつくと、後ろから涙目のウサ子さんに肩を叩かれました。
 
「冬馬ばっかり会話して…あたし一言も会話できなかった…」
「え!? あんなのと会話したかったの!?」
「あんなのでも会話したかったです…」
「そ、そうか。それはすまなかった…」
「うぅ。鹿乃子ちゃん、新しいAI作ってきて…」
「どんなのがいいですか?」
「39歳のキモオタのおっさん。護身用の棒振り回しても逃げないようなので、要らなくなったらポイ捨てしても何の罪悪感も感じないようなのがいい」
「ヴァーチャルでAIな男性なんですから、要らなくなったら終了してもいいんですよ…?」
 
 
 そんな会話を聞きながら、冬馬さんは誰にともなくつぶやきました。
 
「子供ってハンバーグやミートボールが大好きだけど、あれって実は結構安い肉なんだよな…」
 
 
 
 
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